メルクマニュアル18版 日本語版
検索のヒント
ABCDEFGHI
JKLMNOPQR
STUVWXYZ
記号

セクション

トピック

腫瘍免疫診断

腫瘍関連抗原(TAA)は様々な腫瘍の診断を助け,ときには治療に対する反応や再発の判定に役立つ。理想的な腫瘍マーカーとは,もっぱら腫瘍組織から放出され,特定の腫瘍タイプに特異的で,腫瘍細胞の量が少なくても検出可能で,腫瘍細胞の量と直接的関連性をもち,腫瘍のある患者全てに存在するというものである。しかしながら,腫瘍の大半は検出可能な抗原性高分子を循環中に放出するものの,早期診断や集団癌スクリーニング計画の使用に十分な特異度や感度をもたらすという必須の特性を全て備えた腫瘍マーカーはない。

癌胎児抗原(CEA)は結腸癌および正常な胎児の腸,膵,肝に存在する蛋白-多糖類複合体である。血中レベルは結腸癌患者で上昇するが,ヘビースモーカーや肝硬変,潰瘍性大腸炎,およびその他の癌(例,乳癌,膵癌,膀胱癌,卵巣癌,子宮頸部癌)の患者でも陽性を示すので,特異度は比較的低い。CEA値のモニタリングは,当初患者のCEAが上昇していた場合,腫瘍摘出後の癌再発の検出に役立つ。

αフェトプロテインは胎児の肝細胞の正常な産物で,原発性肝癌,卵黄嚢腫瘍のほか,しばしば卵巣や精巣の胎児性癌の患者の血清中にもみられる。

ヒト絨毛性腺刺激ホルモンのβサブユニットβHCG)はイムノアッセイで測定される主要な臨床マーカーで,妊娠絨毛性新生物(GTN)―胞状奇胎,非転移性GTN,転移性GTNを含む疾患スペクトラム(婦人科腫瘍: 妊娠性絨毛性疾患も参照 )―を有する女性において,また精巣の胎児性癌または絨毛癌の男性の約3分の2においてみられる。βサブユニットが測定されるのは,それがHCGに特異的だからである。

前立腺特異抗原(PSA)は前立腺の管上皮細胞にある糖蛋白で,健康な男性の血清中にも低濃度で検出しうる。適切な正常上限を使用し,モノクローナル抗体により測定すると,進行前立腺癌の患者の約90%において明らかな転移がみられなくてもPSAの血清レベルの上昇が検出される。これは前立腺酸性ホスファターゼより高感度である。しかし,PSAは良性の前立腺肥大でも上昇するので,特異度は劣る。PSAは前立腺癌が診断され治療された後の再発のモニタリングに使用できる。

CA 125は卵巣癌の診断や治療のモニタリングには臨床的に有用であるが,値はあらゆる腹膜炎症の過程によって上昇する。

β2ミクログロブリンは,多発性骨髄腫と一部のリンパ腫においてしばしば上昇する。これは主に予後判定において使用される。

CA 19-9は当初,大腸癌の検出のために開発されたものであるが,膵癌に対する感度の方がより高いことが証明された。これは主に進行した膵癌を有する患者において,治療に対する反応の判断に使われている。CA 19-9は,他の消化管癌,特に胆管の癌においても上昇がみられる。

CA 15-3 は転移性の乳癌患者の54〜80%において上昇する。これは,他の良性(例,慢性肝炎,肝硬変,結核,サルコイドーシス,SLE)および悪性(例,肺癌,卵巣癌,子宮内膜癌,消化管癌,膀胱癌)の疾患においても上昇する。このマーカーは主に治療に対する反応をモニターするために使用される。

クロモグラニンAは,カルチノイドおよびその他の神経内分泌腫瘍のマーカーとして用いられる。異常な値は限局性疾患患者の3分の1に,また転移癌患者の3分の2においてみられる。値の上昇は,肺および前立腺などの他の癌においてもみられる。

サイログロブリンは甲状腺により産生され,様々な甲状腺疾患に伴い上昇しうる。これは主として甲状腺全摘術後に甲状腺癌の再発を検出するために,また転移性甲状腺癌の治療に対する反応を追跡するために使用される。

TA-90は,高い免疫原性を示す尿中の腫瘍関連抗原のサブユニットで,軟部組織肉腫,乳癌,結腸癌,肺癌,および黒色腫の70%に存在する。複数の研究が,TA-90の値で悪性黒色腫の手術後の生存期間と無症状の疾患の存在を正確に予測できることを示している。

最終改訂月 2005年11月

最終更新月 2005年11月

ページの先頭へ

前へ: 腫瘍に対する宿主反応

次へ: 免疫療法

イラスト
個人情報の取扱いご利用条件