メルクマニュアル18版 日本語版
検索のヒント
ABCDEFGHI
JKLMNOPQR
STUVWXYZ
記号

セクション

トピック

免疫療法

受動および能動の両タイプを含め,多くの免疫学的介入が,腫瘍細胞に対して行われる。

受動細胞免疫療法

受動細胞療法では,特異的エフェクター細胞が患者に直接注入され,体内では動員も増巾もされない。

リンホカイン活性化キラー(LAK)細胞は患者の内因性T細胞から産生されるもので,それらを抽出しリンホカインのIL-2への暴露により細胞培養系で育てる。増殖したLAK細胞は,その後患者の血流に戻される。LAK細胞は,おそらくその数が多いことから,本来の内因性T細胞以上に癌細胞に対して効果的であることが,動物実験により明らかにされている。ヒトにおけるLAK細胞の臨床試験は進行中である。

腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)は,LAK細胞より殺腫瘍活性が高いと考えられる。この細胞はLAK細胞と同様の方法の培養で成長する。しかしながら,その前駆細胞は切除した腫瘍組織から分離されたT細胞から成る。理論的にはこのプロセスにより,血流から採取するT細胞より腫瘍特異性が高いT細胞の系統が得られる。

インターフェロンを併用することで,腫瘍細胞の主要組織適合遺伝子複合体(MHC)抗原と腫瘍関連抗原(TAA)の発現が高まり,それによって注入されたエフェクター細胞の殺腫瘍細胞能が促進される。しかしながら,これらの薬剤の使用による寛解はまれである。腫瘍細胞に高い特異度のTAAを認識するレセプターを発現するように遺伝子を組み換えたT細胞を用いる新しいアプローチの研究が行われており,顕著な臨床効果を得る可能性がある。

受動液性免疫療法

受動液性免疫療法は外因性抗体の投与で構成される。抗リンパ球血清が慢性リンパ性白血病,T細胞およびB細胞リンパ腫の治療で使用されており,結果として一時的にリンパ球数が減少しリンパ節の大きさも縮小する。

モノクローナル抗腫瘍抗体が毒素(例,リシン,ジフテリア)や放射性同位元素と結合するので,抗体はこれらの毒物を特異的に腫瘍細胞に運搬できる。別の手法では,二重特異性抗体,つまり腫瘍細胞と反応する1つの抗体と細胞傷害性エフェクター細胞と反応する第2の抗体とを結合させたものを使用する。この手法は,腫瘍細胞のすぐ反対側にエフェクター細胞をおくことで殺腫瘍活性を高めるものである。しかしながら,こうした手法は試験の極めて初期段階にあり,したがって臨床的利益の見込みは不明確である。

能動特異免疫療法

腫瘍をもつ宿主において細胞免疫を誘発するように設計されたアプローチは,受動免疫療法の手法よりも有望である。効果的反応が自発的に起こらなかった宿主における免疫誘発では,一般的に宿主のエフェクター細胞に対する腫瘍抗原の提示を増強するための方法が用いられる。

自己の腫瘍細胞(宿主から採取した細胞)が,悪性能を低減し抗原活性を高めるための生体外での手法(例,放射線療法,ノイラミニダーゼ処理,ハプテン結合,他の細胞系とのハイブリダイゼーション)を用いた後に宿主に再注入される。また,免疫刺激分子(顆粒球マクロファージコロニー刺激因子[GM-CSF]またはIL-2などのサイトカイン,B7-1などの補刺激分子,および同種クラスⅠMHC分子を含む)を産生するための腫瘍細胞の遺伝子操作も,エフェクター分子を誘引し全身の腫瘍の標的化を強化するために実施できる。GM-CSF修飾腫瘍細胞を用いた最近の臨床試験から,非常に有望な予備結果が得られている。

同種異系腫瘍細胞(他の患者から採取された細胞)が,急性リンパ性白血病および急性骨髄芽球性白血病に使用されている。強化化学療法と放射線療法により寛解導入される;遺伝的または化学的に操作して免疫原性を高めた同種異系腫瘍細胞に放射線照射し,患者に注入する。また,同種異系腫瘍細胞は,腫瘍に対する免疫反応の強化を誘発するため,カルメット-ゲラン桿菌(BCG)ワクチンや他のアジュバント(腫瘍免疫学: 非特異的免疫療法を参照 )とともに注入されることもある。一部の研究では寛解の延長や再導入率の改善が報告されているが,大半を占めるわけではない。

確定腫瘍抗原を基にしたワクチンは癌免疫療法の中でも最も有望なアプローチである。癌患者から培養された特異的T細胞の標的としてますます多くの腫瘍抗原が明確に同定されている。

特異的で十分確定された抗原に対する細胞免疫(細胞傷害T細胞が関与)は,誘発可能である。確定されたTAAは,ペプチド(通常は免疫原性を高めるアジュバントを同時投与)または特定の蛋白をコードするDNA (組換え型ウイルスを介する)のどちらかの形態で,患者の体内に送りこむことができる。

最近の研究が示すところでは,最も強力な反応は,抗原提示細胞(樹状細胞)を用いてTTAを送達した場合に得られる。これらの細胞を患者から採取し,望ましいTAAを付加し,その後皮膚内に再注入し,特異的抗原に反応するように患者の内因性T細胞を刺激する。さらに,これらの細胞は免疫反応刺激物質の分泌を高めるよう遺伝子を組み換えることができる。

別の治療法は抗原提示細胞と腫瘍細胞を結合させ,有望なTAAをあらゆる角度から活用しようというものである。 樹状細胞に,腫瘍細胞ライセートか死の近い腫瘍細胞のいずれかを付加するか,または生きている腫瘍細胞を融合される。これらの方法は臨床試験段階である。

非特異的免疫療法

インターフェロン(IFN-α,-β,-γ)は 抗腫瘍活性と抗ウイルス活性をもつ糖蛋白である。 投与量に依存して,インターフェロンは細胞性および液性の免疫機能を亢進または低下させる。また,インターフェロンは様々な細胞において,分裂や特定の生合成プロセスを阻害する。ヒトの臨床試験では,有毛細胞白血病,慢性骨髄性白血病,AIDS関連カポジ肉腫,非ホジキンリンパ腫,多発性骨髄腫,卵巣癌などの様々な新生物の形成過程において,インターフェロンが抗腫瘍活性をもつことが示されている。しかしながら,インターフェロンは発熱,倦怠感,白血球減少,脱毛,および筋肉痛などの重大な副作用と関連する。

特定の細菌性アジュバント(BCGおよび誘導体,コリネバクテリウム-パルバムの滅菌懸濁液)には殺腫瘍性がある。それらは腫瘍抗原添加または無添加で,通常は集中的化学療法または放射線療法との併用によって幅広くヒトの癌の治療に用いられている。例えば,腫瘍組織へのBCG直接注入は,黒色腫を縮小させ,表在性膀胱癌の無病期間を延長させ急性骨髄芽球性白血病,卵巣癌,非ホジキンリンパ腫においては,薬物誘発性の寛解の延長に役立ちうる。

最終改訂月 2005年11月

最終更新月 2005年11月

ページの先頭へ

前へ: 腫瘍免疫診断

イラスト
個人情報の取扱いご利用条件