メルクマニュアル18版 日本語版
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はじめに

ミエリン鞘は,中枢および末梢神経系の多くの神経線維を覆っており,神経インパルスが軸索を伝わるのを加速する。ミエリンの障害は神経伝達を阻害し,その症状は,神経系のどの部分が障害されているかを反映すると考えられる。

中枢神経の乏突起膠細胞により形成されるミエリンは,末梢においてシュワン細胞より形成されるものとは化学的,免疫学的に異なっている。したがって,ミエリン障害の中には,主に末梢神経を侵すものもあれば(例,ギラン-バレー症候群,慢性炎症性脱髄性多発ニューロパシー,その他一部の末梢神経障害―末梢神経系障害: 末梢神経障害を参照 ),主として中枢神経を侵すものもある(脱髄性疾患: 中枢神経における脱髄の原因疾患表 1: 表参照)。中枢神経における好発領域は,脳,脊髄,および視神経である。

表 1

中枢神経における脱髄の原因疾患

カテゴリ

疾患

遺伝性疾患

フェニルケトン尿症および他のアミノ酸尿症;テイ-サックス病,ニーマン-ピック病,ゴーシェ病;ハーラー症候群;クラッベ病および他の白質ジストロフィー*;副腎白質ジストロフィ*;副腎脊髄神経障害*;レーバー遺伝性視神経萎縮症および関連のミトコンドリア障害

低酸素症および虚血

一酸化炭素中毒および他の遅延性低酸素性の脳脱髄症候群,進行性皮質下虚血性の脱髄

栄養障害

橋中心髄鞘崩壊(Na流出によっても起こることがある),脳梁の脱髄(マルキャファーヴァ-ビニャミ病),ビタミンB12欠乏症

中枢神経へのウイルスの直接的侵入

進行性多巣性白質脳症,亜急性硬化性全脳炎,熱帯性痙性不全対麻痺/ HTLV-1脊髄症

原発性脱髄性疾患

再発性・進行性疾患(多発性硬化症およびその異型);視神経炎,急性横断性脊髄炎,急性脳炎などの単相性疾患(急性播種性脳脊髄炎および急性出血性白質脳炎)

*一部の亜型では末梢性の脱髄も生じることがある。

HTLV-1 =ヒトTリンパ好性ウイルス1型

脱髄は,感染性,虚血性,代謝性,または遺伝性の疾患に伴って二次的に生じることがしばしばある。原発性脱髄性疾患の原因は不明だが,ウイルス感染症またはウイルスワクチン接種後に発症する場合があることから,自己免疫機構に問題があるのではないかと考えられている。

脱髄は分節性または斑状に生じる傾向があり,複数の領域が同時に,または連続的に侵される。神経機能が修復・再生され,完全に回復するとともに,しばしば再髄鞘化が生じる。しかしながら,広範なミエリン消失に続いて,通常は軸索変性としばしば細胞体変性が起こり,いずれも不可逆的な場合がある。

原因不明の神経障害を有する患者では常に脱髄を考慮すべきである。びまん性または多巣性の障害;突然の発症(特に若年成人);感染症またはワクチン接種後数週間以内の発症;障害の消長;および特定の脱髄性疾患を示唆する症状(例,原因不明の視神経炎または多発性硬化症を示唆する核間眼筋麻痺)は,原発性脱髄性疾患を示唆している。具体的な検査および治療は,個々の疾患により異なる。

最終改訂月 2005年11月

最終更新月 2005年11月

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